台湾で生産される緑茶は主に「碧螺春」「龍井」の2種類があり、台湾十大名茶に数えられるのは龍井の方です。今回訪ねた新北市三峽區ではどちらも生産されており、「十大名茶の産地を訪ねた」ことにはなるのですが、実際に試飲・購入しましたのは碧螺春茶ですので番外編として紹介したいと思います。

三峽の茶畑や製茶場が集中するのは市街地からは外れた新店寄りの成福地区。公共交通でのアクセスはMRT新店・三峽・MRT永寧からのバスになります。今回は新店からのバスを利用しました。

最寄りの停留所は大成二站。

下車すると茶葉の店が点在し、茶の産地へ来たという感じがします。


事前に調べておいた茶農家さんは少し離れたところにありますので、橋を渡ってそちらへ移動。

渡りきった正面には田舎にありがちな多数の看板。廟のものが目立ちます。左右どちらにも評判いい茶農家さんがあるのですが、今回訪問した有福製茶廠さんは左側。

橋から徒歩7分ほどで左手に見えてきました。距離はまったく大したことないのですが、この日はかなり気温が上がったため汗だくに。永寧や三峽から来る場合はバスがこちらまで入ってくるのでほぼ歩かずに着くことができます。

早速お邪魔します。中にいた奥さんにお茶を買いたい旨告げるとご主人を呼んでくださり、試飲が始まりました。
特にこちらからこれを試したい、と申し出る前に手際よく3種類のお茶が出てきて準備完了。左から白茶・蜜香紅茶・緑茶で、茶葉自体は同じですが加工方法の違いでまったく違う見た目になっています。

白茶は台湾でほとんど生産されておらず(青茶・綠茶・紅茶がほとんど)、かなり珍しいものです。茶葉を丸めたりせずそのまま乾燥させるのでかなり大きいのが特徴。加工に3日かかり、失敗すると丸々無駄になってしまうので大変なんだそうです。そのため値段も高め。

壁にはこれまで受賞した賞の数々。

お湯を注いだところ。まったく違う色なのがわかります。

実はここで大変驚くことがありました。それはすべての碗に沸騰した湯を注いだことです。一般的にお茶にはそれぞれ最適な温度が決まっており、特に緑茶は比較的低温で淹れるのが普通です。ところがご主人が用いたのは熱湯。伺うと「うちのお茶はどんな温度で淹れても美味しい。高い温度で淹れた時渋くなったり苦くなったりするのは加工が良くないからだ。」と自信たっぷりのお答え。実際に飲んでみるとまったく渋みがなく美味しいのです。
さらに驚いたのが飲み方。なんと音を立ててすするのが良いとのこと。こうすることによりより多く香りが感じられるのだそうです。

3種類のお茶はそれぞれまったく違った個性があり、白茶はフルーティーな味わい。蜜香紅茶は濃密で緑茶はほのかな甘味。どれも素晴らしい風味があります。実は試飲はこれらだけでなく、冷水で淹れた冷泡茶も出してくださり合計5種類を味わうことができました。

ここで3度目の驚き。普通一度にたくさんのお茶を飲むと気持ち悪くなってくるものですが、有福さんのお茶はそれがまったくなくいくらでも飲めてしまいます。これも「加工が良いから」だそうで、他所とは一線を画す技術をお持ちのようです。実は作ろうと思えば黃茶・黑茶なども作れるらしいのですが、台湾では市場がなく売れないのでやらないとのこと。

淹れたあとの茶葉を取り出してみたところ。機械摘みではなく新芽部分を手摘みしているので綺麗な「一心二葉」です。

さて、産地へ来たらやはり茶畑を見ずには帰れません。こちらの茶畑はどちらですか?と尋ねると「向かいにあるので見たいなら案内するよ」と連れて行ってくださいました。

雑草が多いのは有機栽培の証拠。

綺麗な新芽。

有福さんの生産量はあまり多くなく、土地はまだあるのでこれから申請して作付面積を増やすつもりとのことでした(勝手に増やすことはできないそうです)。後継者問題などで縮小傾向にある茶農家が多い中、頼もしい発言です。

さて、お土産はやはり三峽へ来たので緑茶(150g500元)と珍しい白茶(75g400元)を購入しました。他の緑茶は売り切れてしまい今は1種類だけですが、冬(12月頃)に来ればより香りの良いハイグレードなものが買えるそうです。
さらにボトルに入れた冷泡茶もサービスで持たせてくれ大満足。
もう一種類の緑茶、龍井茶の探索と合わせてぜひ再訪してみたいと思います。

有福製茶廠
新北市三峽區竹崙路87-1號
02-26681230
8:00-20:00


MRT永寧駅から藍45路バス終点下車すぐ
MRT新店駅から779路バス大成二站下車徒歩7分